曲リスト1) B Minor Waltz (For Ellaine) 2) You Must Believe in Spring 3) Gary's Theme 4) We Will Meet Again (For Harry) 5) Peacocks 6) Sometime Ago 7) Theme from M*A*S*H (Suicide Is Painless) 8) Without a Song [#][*] 9) Freddie Freeloader [#][*] 10) All of You [#][*]
本来Bill Evansの美しさというのは水に例えられることが多く、柔らかさや優美さあふれるプレイが魅力なのだが、この作品に限れば反対に炎というイメージを感じる。愛する人を亡くした怒りとかやるせなさとかが、すべてないまぜになった感覚なんだろう。静寂にゆらめくロウソクの火を想わせる「B Minor Waltz」青白い炎を想わせる、幽玄的なプレイが美しい「The Peacocks」などの静の曲調もあれば、激しく赤黒い炎があがるような、絶望と希望がないまぜになった「You Must Believe in Spring」、身を切るような悲しさと荒々しさがある「We Will Meet Again」などの曲調もある。そしてラストにもってきたのが、これまた印象的な「Theme From M*A*S*H」な訳だが本当にBill Evansか?というぐらい力強いタッチだ。GomezとZigmundもいい仕事をしてる。まとめて聴いてみると美しさも儚さも詰まった良い作品だが、やはりBill Evansらしくはないよなあ・・・。まず他の作品を聴いてから聴くのをオススメします。
BILL EVANSの最高傑作というよりJAZZ PIANO TRIO史上に残る世界遺産 (2008-04-19)
トリオの演奏においてエヴァンスへの比重が非常に大きいという点では、エヴァンス・トリオの中でも異色といえるでしょう。その分、愛さずにはいられない作品ではありますが、感傷的な面ばかり強調され、冷静な音楽的な評価が付けられていないアルバムといえる気がします。トリオの作品としては、この後、活動するラストトリオの印象からでしょうか、創造性に乏しいと感じざるを得ません。個人的には、ソロでこれらの曲を演奏、録音していたならば、ビル・エヴァンスのアルバムとして「アローン」を遥かに上回る、深く美しいものになったにと感じますが、エヴァンストリオの作品としては、エクスプロレーションズやコンセクレーションを上回るものであるとは言いがたいです。また、親族の死や曲のタイトル、そして、その後に迎える本人の死とからめて、必要以上にこのアルバムに意味を加えるリスナーが多い気がします。例えば、マッシュのテーマの副題「Suicide is painless」を、エヴァンスの自殺願望を裏打ちするような解釈が見受けられますが、M.A.S.H.はこのアルバムが録音された頃は毎週放送されていたシチュエーション・コメディーです。(原作が映画、その後ドラマになって放送。副題は映画化の際に監督ロバート・アルトマンの息子の書いた歌詞に由来。)アメリカ人にとっては、「あー、あの『マッシュ』のテーマ!」となる曲で、自殺をイメージする曲ではありません。純粋に音楽的な見地から考えれば、コメディー・シリーズのテーマソングであるこの曲の根底に、本来の美しさとその発展性をエヴァンスは見つけだしレパートリーに加えたのだと思います。Someday My Price will come やAlice in Wonderlandに劣らない発展性を見たからこそ、エヴァンスはラストトリオの演奏にこの曲を加えたのではないでしょうか。